先日、SNSに「童貞を殺すセーター」という商標登録出願のことを書きました。
童貞を殺すセーターとは、主要なECサイトで販売されている胸元の大きく開いたセーターのようです。
この出願(商願2022-052057)は、第25類の被服を指定しており、商標が「童貞を殺すセーター」なので、普通に識別力はありそうです。しかし、審査の結果、識別力なしとして拒絶されています。
これはどういうことかというと、審査の一環として、「童貞を殺すセーター」の使用状況を調べたところ、この出願人以外の方が多数使っている事実が判明し、事後的に、この出願人だけに商標権を与えるのはどうなのよ、って話なんです。
弁理士試験の教科書には、商標法第3条第1項第1号~第6号の趣旨として、「自他商品識別力が必要」が書かれています。
この「童貞を殺すセーター」なんかは、商標法第3条第1項第3号の「その商品の産地、販売地、品質・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」ではないので、本来、拒絶されるような商標ではないんです。しかし、先に使用をしてしまった結果、他社の追随を許し、自他商品識別力がなくなってしまうことがあるんですね。そうなると、今回のケースのように、商標法第3条第1項第6号が適用されてしまいます。
もっとも、このケースの場合、反論する余地もありそうですが、現状、意見書を提出することなく、拒絶査定となっています。どうなるんでしょうか。
なにが言いたかったかというと、ユニークな商標を考えた場合、それを使ってしまうと業界に広まってしまうこともあるわけです。そうなってからの出願では遅いんです。
しばしば、商標の登録要件には、新規性・進歩性などがないから、出願は販売の後からでもよいなんて言われていることもあるようですが、普及しそうな商標の場合、使用の前に出願した方がよいです。