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ステッキ型スイーパー特許から学ぶ

ステッキ型スイーパー特許(特許6960080号)というものがあります。
なんのことはない、お風呂の湯垢を取ることができる中空の棒の特許です。
この特許のなにがすごいかというと、出願時の内容からの大逆転劇です。
出願時の請求項は豪快です。「すいーぱー」ってなんやねん、そもそもスイーパーって、どちらかというと、Sweepなので箒とかブラシの類のことじゃなかったでしたっけ?って言わずにお付き合いください。

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
風呂は約200ℓの水を使う。
限りある水資源を大切にする為、すいーぱーを発明した。

___________特許請求の範囲終わり____________
で、明細書も同様に豪快です。

ステッキ型スイーパーの構造に関する記述は、図2の第2文

「4をゴミ部分に近づけて1を離す。ゴミが3に吸い込まれてくる。3にいっぱいになったら外に捨てる。同様に1~2回繰り返す。。」だけじゃないでしょうか。
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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
今までに、この様な商品は無かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
浴槽の中央の底に沈殿したゴミを少量の水で吸い取る。
【課題を解決する為の手段】
【0003】
追い炊きすると、水流が出来沈殿物が全体にまじり取れなくなる。
必ず、追い炊きする前に取る。
本発明は、以上の構成によりなるスイーパーの商品である。
【発明の効果】
【0004】
本器柄の部分に、親指で空気を抜く穴を塞ぎ水中に沈め沈殿物に向け指を離し空気を抜く、水圧で沈殿物が入る。
1回で取り切れない時は、何回か繰り返す。
出来るだけ追い焚きする前にする。
沈殿していたゴミが拡散し取れなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】 本発明に係るスイーパーの側面図である。
【図2】 本発明の使用例を示す。1を 親指でふさぎシンクの底にある中央ゴミの部分
まで沈める。4を ゴミ部分に近づけて1を 離す。ゴミが3に 吸い込まれてくる。3に いっぱいになったら外に捨てる。同様に1~2回繰り返す。。
___________明細書終わり_________________

第1回目の拒絶理由通知は、請求項に記載の発明(内容)が不明確だという理由のみです。出願人は、当然請求項の補正をする訳ですが、もうこの時点で審査の回数を1回損してますよね。私だったら発狂しちゃいます。
実際、第2回目の拒絶理由通知は、既存の湯垢吸い取り棒を引例とした新規性・進歩性なしの最後の拒絶理由通知でした。
しかし、この出願人はあきらめません。最終的に以下のように請求項1を補正し、特許になったというお話です。
【請求項1】
ステッキ型の同径の中空棒状部材(2)と、穴(1)と、集積部(3)と、吸い込み口( 4)を備え、中空棒状部材(2)の上部の持ち手部分に設けた穴(1)を指で塞ぎながら浴槽の水中に沈め、沈殿物付近で指を離すことで、中空棒状部材(2)の下端に設けた吸 い込み口(4)から沈殿物を吸い込み、中空棒状部材(2)の下部に設けた2つの穴を通して当該部材の外部に設けた集積部(3)に貯留することを特徴とするステッキ型スイー パー。

かなり大胆な補正で攻めました。めでたし、めでたしです。
なにが言いたいかというと、このような補正が認められたのは、上記のような構造を読み取れる図面が作成されていたからです。

文章で十分に書かれていると思っても情報量は意外と少ないんです。重複に見えても図面をつけておいた方が良いことがあるというお話です。

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